谷元 浩之CON-CANムービー・フェスティバルディレクター
第39回ロッテルダム映画祭短編部門(オランダ)
今回、フランス在住のデュオ、チャーラ監督(トルコ)とギヨーム監督(フランス)を起用し、CON-CAN(メディア総研)がプロデューサーとして製作したショートフィルム、「SIX」が、ロッテルダム映画祭の短編部門 (Spectrum)に入選した事を受け、映画祭から招待され作品の上映のために渡欧した。
1月27日の深夜、次回作の編集中のまっただ中監督らとパリから高速鉄道(TGV)に乗り、ロッテルダムに到着。外に出るとみぞれっぽい雪が降っていて、風も強く、チャーラがお気に入りの巻きタバコを取り出すと、早速警官が別のものを巻いていると勘違いし、職務質問を受けた・・・笑
まさに、「ロッテルダムにようこそ」といった歓迎だった。
その後、チャーラの弟が住むアパートへ移動。
床に着いたのは、午前4時頃だった。
翌日、10時頃起床し簡単な朝食をとった後、会場へ。
今日は、最初の上映日。
まずは、映画祭パスを貰いにメイン会場へ受付に行く。
受付に行くと、事前にオンライン登録した情報を確認し、一人一枚づつ写真、役職、分野が記されたIDカードを受け取り、映画祭のロゴが入ったバッグを受け取る。
中には、映画祭のプログラム、各カタログ、スケジュール、各種会合の招待状、そして、観光案内などが入っている。
映画祭ゲストだけでも3千人以上になり、参加者は全員同じロゴの入ったカバンを下げているので、一目で分かるようになっているのと、映画祭の宣伝も同時に出来るのでとても効率的で効果的。
途中何人か別の映画祭で知り合った関係者と会い、少しワクワクする。
ロッテルダムは、いわゆる世界制作者連盟に加盟はしていない映画祭だが、その質や、プログラムの完成度から世界4大映画祭に並ぶ権威ある映画祭で今年、39回目を迎える。
特にアジアの新しい才能を発掘する事では長年定評がある。
映画祭の動員数は毎年30万人を超え、上映会場はメイン会場を中心に市内24カ所にも及ぶ。
上映会場は、部門(長編、短編、特別プログラム、各種特集など)ごとに振り分けられていうようだった。
僕らの短編部門も、決まった会場で連日上映されていた。
映画祭は、近代的な新しい建築が集まる中での開催で、ネットを始め、各種インフラが整っており、オランダ的なアートで洗練されたプロフェッショナリズムを感じた。
我々の作品「SIX」の上映は2回あり、初回は満席。
2回目の上映など、朝10時という時間帯にも関わらずほぼ満席だった。ショートフィルム部門でもこんなに人が見に来る事に驚いた。
観客の中には、ロッテルダムを拠点とする大手制作会社(リボルバーフィルム社)のプロデューサーや、他の制作関係者も何人かおり、日本での共同制作について色々質問を聞かれた。
また、東京国際映画祭プログラム・ディレクターの矢田部氏にも来て頂いた。
上映は一般のお客さんも多数おり、SIXの中に出てくるあらゆる日本の日常の断片から文化を少しでも知ろうと、色んなディテールな質問を受けた。
そういった質問からも、観客の映画を楽しむ姿勢というか、知的好奇心の高さを感じた。
今回SIXは、コンペでは無く特集上映だったので賞はありませんでしたが、ロッテルダムでは4−5千本以上の作品の中からプログラムが選ばれるので、入選するだけでも今後の活動にプラスになります。
映画祭自体はやはり長編のコンペが最大の見所ですが、ロッテルダムの短編に入選した作家達も、関係者の間でその年の動向や次回作に注目されます。
短編は、その分野での芸術性を極めるタイプと、長編制作に移行する上でのステップとして制作しているタイプと大きく二つに分かれる印象を受けました。
チャーラ監督とギヨーム監督も、今後は長編をメインに活動をして行く予定です。
映画祭には、コンペ含む「作品上映」以外に、マーケット(映画見本市)や、ライブラリーなど、関係者のみを対象とした、様々なビジネスサービスも充実しています。
そういった各種サービスで一番感動したのは、デジタルフィルムライブラリーの質の高さでした。
過去の作品含め、映画祭に入選した短編/長編全作品は、全てデジタイズされ、映画祭が独自で開発したオンラインシステムによって、無線LAN経由でiMacの24インチのモニターでのフルスクリーン視聴が可能です。
独自の映像配信プログラミングの開発と、技術の高さに驚きました。
エンコードの画質もかなり良かったです。
後、もう一つ際立っていたのは、制作支援に対するプログラムがものすごく充実していました。基本はオランダ制作者向けですが、連日様々なセミナーや、カウンセリングが各会場で行われていました。
あっという間の5日間の滞在でしたが、ロッテルダム映画祭はあらゆる部分で「プロフェッショナル」で、「ハイスタンダード」な映画祭と感じました。
ロッテルダム映画祭に比べたら、僕が運営しているCON-CANは赤子のようなものですが、「プロフェッショナル」である事というのは、常に意識して行きたいです。
次回のレポートは、世界最大の短編映画祭、フランスのクレルモンフェランからのリポートです。