命をつなぐ、砂漠の一滴

広瀬之宏京都メディア・アート・ラボ設立準備委員会代表

◎京都から世界へ

ここでの具体的なプログラムは、世界のインディーズ映画(自主制作短編映画)をとおして、京都の国際的知名度を活かしながら、海外との交流を図り、情報、頭脳、感性、技術、システムなどを相互交換させながら地域の文化力と教育力を高め、同時に地域経済の発展への導線を構築することを目的としています。

また近年のIT化およびデジタル革命を理解し、動画をコンテンツとして、グローバルな観点から文化、教育、経済的に有効な具体的な活用を充実させるためのコンテンツ制作やソフト開発の計画を立てています。
さらに、世界のクリエーターやプロの映画監督とのつながりとその優れた才能を人的資源と考え、教育支援、文化交流、企業連携など、あらゆる可能性を探りながら、〈産官学地〉の連携で地域の多様な質的向上に役立たせるための協働の場として「京都メディア・アート・ラボ」を位置づけています。
今後、私たちの活動が、たとえ砂漠の一滴の水であろうとも、その一滴が確実に一つの命につながるものでありたいと考えています。

100408_rokkandou

◎ソーシャル・メディアとしての自己の確立

「京都メディア・アート・ラボ」のコンセプトワードは、文字どおり「メディア」と「アート」です。
「メディア」とは、一般に言われているテレビや新聞、インターネットといった情報・通信媒体だけでなく、基本的には情報を発信する個々の人間そのものであるはずです。自分が伝えたいことを自分が媒体となって、自分以外の誰かに伝達・発信する。これがメディアの原形です。なにもメディアという特別なモノが存在するのではなく、メディアは自分自身そのものなのです。だからこそ、私たちが重要視するのは、一人一人にこだわった、個々の能力というメディアなのです。

◎アートは、創造への敬意

また、「アート」は、絵画や彫刻といった狭義の芸術分野に留まるのではなく、私たちに感動を与える全てのモノとコトがアートなのです。人間業の絵画や音楽、スポーツ、料理など…に限らず、人知を越えた森羅万象、宇宙全ての創造がアートなのです。それは、存在という創造への敬意であり、万物に与えられた誇りではないでしょうか。
そもそも芸術は「美の追求」であり、「美」とは、視覚的な見栄えだけでなく、感動であったり、思いやりであったり、やさしさであったり、発見であったり、生き様であったりします。その心の動きを共有したとき、人は美として感動するのです。
“恥の文化が無くなった”とよく言われますが、美意識を教えなければ、「恥も外聞もない」となるのは当然のこと。美しいモノを見たり、聴いたり、触れたり、また自分で産み出す創造の喜びも含めて、芸術と遊ぶ機会と場をみんなで創っていけば、そこには共感が生まれ、何が良くて何が良くないかは、自然と分かるようになるのです。その喜びが、人と人、人と社会、そして人と世界を結び、つながっていくのです。
ネットがもたらした第二次産業革命。せめて新しい文明が立ち上がったのであれば、いいところを見つけて使いこなしていくだけのソーシャルな智恵ある人類でありたいと願っています。
「京都メディア・アート・ラボ」は、ダーウィンの進化論では解けない“水、陸、空を制覇した昆虫”のように、小さくても未解明の魅力ある力強い存在を目指しています。